2014年5月20日火曜日

31 KNOTS 「The Days And Nights Of Everything Anywhere」


オレゴン州はポートランドのヘンテコスリーピース、2007年作の六枚目。
引き続きレーベルはイリノイ州のPolyvinyl Records

今回は前作よりも多くのゲストを迎えている――と言っても仲間内だが。
バンドの支柱:ジョー・ヘージの別バンド:TU FAWNINGのトゥーサン・ペロー(M-01、03で金管楽器系)と、前作に引き続き参加のコリーナ・レップ(M-03、06、11でコーラス)。本作でもドラム兼任録音技師として兄弟のイアンと共に卓へ向かうジェイ・ペリッチが手掛けたDEERHOOFのドラム:グレッグ・ソーニア(M-06でギターと、本作の共同ミキサー)など。
それによる変化は……特になし。
まあ金管楽器導入は新機軸っぽいが既に演っているし、ヘージが忙しなく操るサンプリングを生演奏にしただけという見方もあるので、本当に特になし。平常運転。
ゲストを呼んだ程度で音楽性が移ろってもらっても困るが、少しは新風を吹き込んで伸びしろを見せていただかないと、なんて意見もありうる。
ここで考えてみて欲しい。存在自体が特異な音楽性をしているのに、毎回毎回あっと驚く新機軸を考える必要があるのだろうか。
いや、全く、一切、これっぽっちもない。

相変わらず曲展開やアルバム構成はごろごろ変わる。奇妙なサンプリングセンスを山車に不条理な夢を具現化したような、地に足が付けないM-02。フィンガーピッキングのベーシスト:ジェイ・ワインブレナーの妙技が存分に味わえる、ラウドなM-04。タメの使い方がクセになるM-05。一つの曲として聴いて欲しい、ギターの掻き鳴らしから明け、三者三様の火花散るバトルに発展するM-08~09。アルバムの終わりに向けて、ピアノを用いてしんみりさせにくるM-10。大聖堂で録音したかのようなラストのM-11――
この通り、剥離しそうな多岐に亘る音楽性を存在感だけで癒着しているバンドへ、他に何を試せと仰るのか。
逆に彼らにとって作品の統一感や方向性など、件の〝存在感〟とやらを全作曲の舵を取ることで背負っているヘージが有する奇天烈なセンス任せだと分かる。
ココでも書いたが、感性の勝った出来人と我々凡人では同じ景色でも映り方が違うのだ。

このある意味堂々たる風格は、もっと評価されるべきかと思う。
彼らは彼らなりに王道、金太郎飴なのだ。

M-01 Beauty
M-02 Sanctify
M-03 Savage Boutique
M-04 Man Become Me
M-05 The Salted Tongue
M-06 Hit List Shakes (The Inconvenience Of You)
M-07 Everything In Letters
M-08 The Days And Nights Of Lust And Presumption
M-09 Imitation Flesh
M-10 Pulse Of Decimal
M-11 Walk With Caution
M-12 Innocent Armour (Bonus Track For Japan)
M-13 Wrong And Why It's Not Right (Bonus Track For Japan)
M-14 The Beast (Bonus Track For Japan)

日本盤は本作でしか聴けないボートラを三曲追加し、アートワークも差し替え。
アウトテイクっぽい地味な曲だけど、捨て曲ではないのでお得。


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