2013年2月12日火曜日

SUNN O))) 「Black One」


シアトルの超弩級重低音破壊神:ステファン・オマリーとグレッグ・アンダーソンによる2005年作品、六枚目。

今回、実験音楽系からのオーレン・アンバーチとジョン・ウイーゼ、ストーナーロック系で活躍するマティアス・シュニーベルガー以外の招集面子からして、制作意図がはっきりしている。
M-03、07ではヴォーカル、M-05、06ではギターやキーボードのマレフィック(XASTHUR)、M-02のヴォーカルはレスト(LEVIATHAN)。
その他、M-05の歌詞引用はMAYHEMでかのアッティラ・チハーの前任ヴォーカルだったデッドから。M-03はIMMORTALのカヴァー。
M-01の曲タイトルの元ネタはSTRIBORGの中の人。M-07は同様に独りバンドで、この界隈の音楽性を築き上げたBATHORYに捧げられたもの。

我々門外漢にはまるで耳慣れない固有名詞が羅列されているが、そのままずばりブラックメタルの人々。白塗りの顔(コープスペインティングと言うらしい)と黒ずくめの服装で悪魔を稀に心底本気で賛美するデスメタルの派生ジャンルだ。
ライヴでは黒衣を纏ってプレイしたり、〝ドローン・スラット〟やら〝ミスティック・フォグ・インヴォケイター〟やら厨二臭いそれモンのステージネームでクレジットしたり、自分のレーべルで手厚く保護したりと、SUNN O)))は常にブラックメタル愛を公言してきた訳だが、ココまで明確に作品へと反映させるとは思わなかった、今更。
彼らにとってブラックメタルは、希釈・攪拌された数多の影響土壌の一つでしかないと思っていた、筆者は。

とは言え、性急なビートに歪んだトレモロ奏法のギターが乗るブラックメタル特有の音世界が展開されている訳などない。
むしろ例の、聴き手の臓腑を握り潰す鈍重ヘヴィギターを主とした漆黒のパワーアンビエント。それをM-01からM-07まで、徹頭徹尾。カヴァー曲ですら情け容赦なく溶解。
その聴かせ方もただ垂れ流すのではなく、良くタメを利かせてその効果を最大限に増幅させるような工夫も当たり前の如く執り行っている。各ヴォーカリストの咆哮も、暗黒リフを引き立たせる背景音でしかない。
このへヴィディストーション貫徹路線、聴き手へのハードルを彼らの意図せぬ方向で高くしただけのような。加えて、音像が初期に戻っただけのような。
これは『ギターもエレクトロニクスも、まだ探求するべき余地がある』と語り、前作のようにドヘヴィリフだけに頼らない音世界を確立させつつある彼らが進むべきステップではない。

ただ、なぜこのような内容のアルバムを、あえてこの時期に創ったかは明白。
この前年の2004年。レーベルオーナーの父と共同して、ブラックメタルどころかデスメタルすら存在していない頃から孤軍奮闘していた、件のBATHORYの中の人:クォーソンことトマス・フォルスベリが急逝している。
本作はおそらく、ブラックメタルの始祖:BATHORYへ最大の敬意を込めて編んだ鎮魂盤であり、SUNN O)))が地下音楽界に叩きつけた独自の暗黒論でもある。

Disc-1
M-01 Sin Nanna
M-02 It Took The Night To Believe
M-03 Cursed Realms (Of The Winterdemons)
M-04 Orthodox Caveman
M-05 CandleGoat
M-07 Bathory Erzsebet
Disc-2 「La Mort Noir Dans Esch / Alzette」
M-01 Orthodox Caveman
M-02 Hallow-Cave
M-03 Reptile Lux
M-04 CandleGoat / Bathori

日本盤は2006年に1000枚限定生産されたヨーロッパでのライヴ音源を追加。
SUNN O)))二人の崇拝対象であるEARTHのディラン・カールソンが参加した、トリプルギター/ベースレス編成の代物だ。ちなみに本編でも参加のマレフィックの他、いつものランドール・ダン(ライヴPA)やスティーヴ・ムーア(トロンボーン)やトス・ニューウェンフイゼン(アナログシンセ)も名を連ねている。



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