2012年2月24日金曜日

FOUR TET 「There Is Love In You」


〝音色の魔術師〟キエラン・ヘブデン(FRIDGE)のソロエレクトロニカユニット、五枚目のオリジナルフルアルバム。2010年作品。
レーベルはいつも通り、ロンドンのDomino Recording

以前から音で「演るよ、演るよ」と匂わせてきたダンサブルな四つ打ちを、大々的に解禁。ノリの良い作品になった。
だが、聴き進めていくうちに何か象徴的なモノが忘れられているような気が。
ずばり〝フォークトロニカ〟をその名たらしめている生音、この削減だ。
確かに完全排除ではない。ところどころ、木・鉄琴やらハープやらの音が装飾音として散りばめてある。ただ、以前はもっと分かりやすく使っていただろう、と。

こうなると、FOUR TETを〝フォークトロニカの総大将〟として聴くのか〝エレクトロニカ界の旗手〟として聴くのか――そんな踏み絵盤として、問題作やら実験作のような質面倒臭い扱いを本作は受けてしまうのだろうか。
そんな、もったいない!
本作は、何が悪いのか何が良いのか分からなかった前作「Everything Ecstatic」のもやもやを、本作中ジャケの青空写真のようにすかーっ! と晴らす痛快盤だと思う。
さあ〝フォークトロニカ〟なんて単語、きれいさっぱり忘れよう!

ダンサブル、と言ってもアッパーではない。ただ整然とキックとハイハットを四つ並べた安直な創りではなく、打ち方をちょこちょこ変えたりする工夫も欠かさない。
「Ringer EP」で垣間見せたシンプルなビートに味わい深い上モノを融合させるトラック像は、如何にも彼が進みそうな発展経路。同時にいつもの突飛な音色使いは影を潜めたが、音色の選択が独特なのは今まで通り。

つまり、本質的には何も変わっていない。
トラックの創りをソリッドにして浮かび上がってきた上澄みが本作。灰汁ではないよ。すっと耳に馴染んで気持ち良いこの音をすてるなんてとんでもない!

M-01 Angel Echoes
M-02 Love Cry
M-03 Circling
M-04 Pablo’s Heart
M-05 Sing
M-06 This Unfolds
M-07 Reversing
M-08 Plastic People
M-09 She Just Likes To Fight

M-02の女性シンガーの声ループが「Love Cry~」ではなく、「おっぱ~い♪」と聴こえる貴方は重症。筆者は言うに及ばず。


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