2012年1月16日月曜日

THRONES 「Day Late, Dollar Short」


EARTHMELVINSHARVEY MILKHIGH ON FIRE(ゲスト扱いでSUNN O))))など、この筋から一目置かれるバンドに在籍履歴がありながら、いづれも長続きしない〝暗黒音楽界のハイエナ〟によるソロプロジェクト、三枚目の編集盤。2005年、SUNN O)))の片割れが経営する暗黒音楽専門レーベル・Southern Lordより。
アルバムというトータルコンセプトに興味がないのか、アルバムを編む忍耐力がないのかは分からないが、コンピ、スプリット、サントラ、単独EPなど小出しにしてきた音源を引っ掻き集め、アウトテイクを加えたのが本作。
本作だけでお世話になったレーベルが十も数えるのだから、顔の広さはシーン屈指だ。伊達に渡り鳥家業をやっていない。

さて内容はというと案の定、ボトムが地中に潜って行く暗黒ハードコア系。自身がベーシストだからして、軸はびりびりに歪ませた重いベースライン。ギターなんか要らないと言わんばかりにデカイ音で幅を利かせるが、ギターを弾いているトラックもある。ヴォコーダーなどで加工しがちだが、ほぼ自身が歌っている。ビートはおそらく自分で叩くか組むかしているはず、とまあ卓操作以外はほぼぼっち作業。
ライヴになるとぽつんと独りステージに立ち、打ち込みをバックにベースを弾きつつ歌う、とほほな光景が展開されていたそうな。
『誰も手ェ貸してくんねーから俺独りで全部演ってやんよ!』なのか、『独りの方が気楽で良いや、好き勝手に演れっしよ!』なのかは分からない。

ただアンタ、そこまで器用なミュージシャンじゃないでしょうが。

本作はとにかく安っぽい。打ち込みの使い方の稚拙さは脱力モノだし、編集盤だからと半ば開き直ってラウンジ風もハードコアパンクもポストロック風もスラッジコアも一つの鍋へ無造作に放り込んでるし、曲構成もほぼ感覚頼りだし。
だが、これらのマイナス点が全て、良い意味での如何わしさ、ユーモア、何でもアリ精神、とプラスに評しても許されそうなエネルギーに満ちているのは才能か人徳か……いや、ただ単に変人なんだろうなあ。
M-06ではへなちょこ聖歌風、M-11ではおとぼけマーチ風と、人を食ったような曲もあるかたわら、M-15のように突如ぎらぎらした殺意を聴き手に向ける凶暴さもある。M-10のような突貫ハードコア曲もある。かと思えば、本作に収録された五つのカヴァー曲は意外と真面目に翻案していたりする。
こんな不安定な人、バンドという組織では扱いづらいだろうなあ。

暗黒ハードコアとして聴くよりも、例えばTRANS AMのような雑多ロックバンドの感覚で聴くと、次に何が飛んで来るか分からない意外性から、凄く楽しめるかと。ヘヴィ音楽耐性は思ったより必要ないかと。
もうコレ、ハードコアじゃなくてモンドだよほんと。

M-01 The Suckling
M-02 Young Savage
M-03 Algol
M-04 Reddleman
M-05 Genex
M-06 Silvery Colorado
M-07 Coal Sack
M-08 Epicus Dommicus Bumpitus
M-09 Piano Handjob
M-10 Simon Legree
M-11 Easter Woman
M-12 Valley Of The Thrones
M-13 Oracle
M-14 Black Blade
M-15 Obolus
M-16 Davids Lib
M-17 A Quick One
M-18 The Walk
M-19 Nostos Algos


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