2011年10月20日木曜日

FOUR TET 「Ringer」


キエラン・ヘブデン(FRIDGE)のソロプロジェクト、2008年作のEP。オール新曲(M-03はオンラインマガジンのコンピに収録)で、後のアルバム流用なし。三十分ちょい。
気合、入っています。

感じの悪い見方をすると、前作「Everything Ecstatic」は行き詰った作品だと思う。前々作「Rounds」よりもFRIDGEとの差異が見えなくなっていた。
もちろんスカを出さないヘブデン師匠。その質は文句を付けてはいけないレヴェルだったが、高い次元の作品を創れる人だからこそ、筆者は重箱の隅を穿りたくなっていた。

それがこう来るとは! と、筆者は聴きながらにやにやしてしまった。

前から兆候はあったが、本作で大胆に四つ打ちを導入。
で、完全にクラブ仕様のダンサブル方面へ移ってしまったのかと訊かれれば、曲者のヘブデンが捻らないはずがないでしょうよ、と答える。
M-01はミニマル化と思いきや、途中で荒々しいビートを大胆に絡ませる二枚刃仕様。M-02はクリックっぽい味わいもある。M-03はマニュエル・ゲッチングばりの音を奏でるギターが、耳障りな長音や虚空を周回するシンバルの残響音と静かなせめぎ合いを繰り広げる秀曲。M-04は可愛らしい主音に覆い被さるさまざまな楽器が、如何にも突飛な音色使いを好むヘブデンらしい。

――とまあ、音世界を明確にしつつもバラエティに富んだ長尺EP。
テクノテクノしくなったが、何だかんだ“生音とエレクトロニカを融合する”フォークトロニカらしき部分は残してあるし、この前年に出た本体六年ぶりのアルバム「The Sun」とはきちんと棲み分けが出来ているしで、もう筆者の口から屁理屈は出なくなりましたとさ。
やっぱ凄い、キエラン・ヘブデン。

M-01 Ringer
M-02 Ribbons
M-03 Swimmer
M-04 Wing Body Wing

筆者が持っているのはUK盤CDなのだが、その鏡面はなんと黒。つまりゲームのPS1のようなディスク仕様。びっくりした。
お陰で聴けないCDプレイヤーもあった。皆さんもその点、ご留意を。


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