2011年4月27日水曜日

HELIOS 「Eingya」


アメリカ人はエモい。
がはがは笑ってOne-Two-Manyな大雑把な性格、というのがパブリックイメージだろうが、地球上で最もエモい国だ。断言しよう。
エモーショナルハードコア、略してエモコア発祥の地がアメリカなのだから、隠しようなくエモい。お見通しなんだよ! いくら首を振ろうがな、お前らのDNAはエモなんだ! 認めろよ! アメちゃんはエモい! 言わずもがなエモいのさ!

軽く例を挙げようか。
この国はあんまりエレクトロニカ音楽が盛んなようには見えないのに、ぽっと優秀な奴が現れたとたん、今回紹介するようなもう……聴いていて胸が張り裂けそうなくらいエモかったりするからさ。
欧州のニカ職人はもっとドライだ。このエモ大国がっ!

HELIOSことキース・ケニフはペンシルヴァニア州出身。きちんとバークリー音大で音楽教育を受けた人である。米系ニカ人種はこういった真っ当なルートで、この音魔境へ足を踏み入れる者が多い。我流で音を築き上げる者が多い欧州勢とは対照的だ。
本作はHELIOS名義の二枚目に当たる2006年作品。ニカ職人だけあって、別名義を使い分けてまでこつこつとハイペースでリリースを重ねる頑張り屋さんだ。中にはケニフの双子の兄弟が参加する名義や、奥さんを駆り出して自ら歌っている名義もあるそうな。

それにしてもこのエモさは何だ。
ピアノやギターなどの生音を基調にトラックを組んでいることからフォークトロニカの範疇に入るのだろうが、どの音も全力でエモエモしい空気を醸し出している。音数を切り詰めれば自然と寂寥感が出てエモくなるのだが、これは素材のエモさに侘び寂びのエモさを加える、日本人にとって反則級のエモテクである。
空間処理の仕方がかのBOARDS OF CANADAを思わせる、としてもこのエモさは過ぎる。BOCも少なからずエモい部分はあるが、それは想ひ出は常に人の心を感傷的にさせるものだからであって、音で聴き手を童心に導いてくれる彼らの意図する部分ではない。
HELIOSは具体的に我々の心のどこか、エモい部分をくすぐりにきている。
普通は意図したエモさなどやらしいだけで通用しないのだが、少なくとも筆者はやられる。軽い気持ちでエモい音を出していないから、心の底から己のエモい部分を曝け出して表現しているから、に他ならない。
コレを自然に演れるからこそ、エモ国家・アメリカなのさ。

何だかいつも以上に良い落ちが思い付かないのも、このアルバムがエモ過ぎるからだな、きっと。
どうせ俺なんか文才などないからな――なんて考えた時点で、HELIOSの創るエモエモしい空気にやられている証拠なんだろうな、とする。

M-01 Bless The Morning Year
M-02 Halving The Compass
M-03 Dragonfly Across An Ancient
M-04 Vargtimme
M-05 For Years And Years
M-06 Coast Off
M-07 Paper Tiger
M-08 First Dream Called Ocean
M-09 The Toy Garden
M-10 Sons Of Light And Darkness
M-11 Emancipation


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